電子書籍によって下がった企画出版へのハードル

近年では電子書籍によって企画出版のハードルが下がっただけでなく、十分な知識さえあれば自力での出版も可能になっています。
通販の大手2社が提唱している電子書籍のブランドとスマートフォンのシステムを寡占している2社が提唱しているブランドでは個人出版が行えるサービスを実施しています。それぞれ印税に関しては最大70%と紙の書籍よりもかなり多く、条件さえ整えば無料での配布も可能となっています。ただし、海外系の電子書籍のブランドですと手続きによってはアメリカと日本の税金の2重取りになってしまったり、データの形式が限られていたりと専門的な知識が必要になります。また、海外系の1社では特定のOSのパソコンからでしか入稿できないと言った不便な点もあります。

企画出版に必要な作業はプロが代行します

こういった専門知識がない場合は、出版社や電子書籍化の代行サービスに頼むと良いでしょう。安いものですとデータの変換とストアの登録だけが2万円前後なっており、原稿の校閲から表紙の作成など出版の時と同じようなサポートを受けるのであれば最大20万程度必要です。それでも、紙の本を出版する際の費用数十万に比べたら格段に安いと言えます。
筆者が一番苦労すると思われる表紙の作成ですが、それも代行してくれる業者があります。専門家にお願いするだけで簡単に電子書籍を発行してくれます。ただし、代行サービスに関してはあくまでも登録の代行のみを行うだけですので、パソコンで執筆を行えるほどの腕前があれば自分自身で登録を行ったほうが安くつくという場合もあります。

手厚いサポートの出版系サービス

こうして形になった電子書籍ですが、素人が企画した場合どうしても完璧に作ることができず、思わぬミスが出てしまうこともありますので、執筆経験のない方の場合は出版社による出版サービスを利用するのが良いと言えます。
出版社によっては企画の段階からアドバイスを行って具体的な形にする手助けを行ってくれることもありますし、最初は自費出版という形で電子書籍だけでなく紙媒体の本で出版することもできます。更に個人での電子出版の手続きを行った場合や代行業者で行った場合では基本的に1社ごとに契約しなければいけませんが、電子書店取次店と契約を行っている出版社であれば1回の契約で複数社の電子書籍のブランドで出版を行うこともできます。

企画出版の時に払われる印税について

一般に多く知られている印税という言葉があります。しかし、実際にその中身を知っている人はそう多くありません。
ここではまず、印税とは何なのかを説明します。CDや映像物には印税がつきます。ただし、本に限って言えば印税とは出版社が著者に対して支払う著作権使用料を指します。売上に関わらず初回の発行数に対して発生する発行印税と、実際に販売された部数に応じて発生する売上印税の2種類があります。発行印税は売れなくても印刷した分を支払うことになるため出版社の方にリスクが有り、売上印税は売れた分だけ支払われないことから、著者にとって利益にならない場合もあります。ただし、売上印税の場合には売れなかった場合のリスクを軽減するために、初版本の部数については一定の印税を保証する制度が用意されています。

企画出版の印税の割合

企画出版の場合、著者がもらえる印税は本の定価の5%から15%です。知名度やコンテンツの価値により変動します。たとえば印税が10%で定価1000円の本を5万部売ったとしたら、印税は500万です。
これくらい売れると、出版社側の利益も大きなものとなります。さっきの例えですと売上は5000万円になり、そこから著者に渡る原稿料と印税、装丁のデザイン費用や印刷代、広告料などを差し引いて出版社によって経費の誤差はありますが、20%から40%の利益を得ています。ですがこれはあくまでも売れればの話です。空振りに終わったときのリスクを常に考えなければならないため、多くの出版社はネームバリューのある著者に原稿を依頼するわけです。

自費出版でもお金は入ってくることも有ります

大抵の方は企画出版の場合しか印税は入ってこないと思われがちですが、自費出版の契約内容によっては印税の支い対象となる場合があります。完全に出版費用を著者が受け持つ場合には、すべてが著者の所有物になりますので印税自体が発生しませんが、自費出版を謳っていても出版費用の一部を負担する共同出版の形式をとっている出版社もあり、その場合は印税が発生します。
その時の印税の割合は企画出版のときよりも高く、20%以上という出版社も珍しくありません。これは著者も出版費用を一部負担しているためこのように大きな印税率となっています。ただし、それで十分元が取れるということはなく、たとえ印税が50%だとしても出版費用を回収するためには約2000部を売り上げる必要があります。つまりは自費出版で利益を上げるには印税率が高い出版社を選べば元が取りやすくなりますし、モチベーションも上がりますので一石二鳥です。

素人が企画出版にたどり着く方法

近年では自費出版を行う出版社の中で筆者が希望する場合には書店の販売網に乗せ、売上が良ければ企画出版に契約し直すところも増えてきていますが、それでも本を出版するんだったらまずは企画出版で出してみたいという方は少なからずいらっしゃいます。そんな方におすすめなのが出版社への企画の持ち込みで、古典的で効果がなさそうに思われますが、実際似この方法で企画出版にこぎつけ、作家としてデビューした方はたくさんいらっしゃいます。
具体的な方法としてはまずどのような本を作成したいのかを詳細まで記載した企画書を作成し、それを自分が書きたいジャンルを扱っている出版社に持ち込みます。ただし、出版社も日々の業務に加えて持ち込まれた企画書に目を通すのは時間的にも余計にコストがかかりますからよほど目を引くタイトルや内容でなければ見てもらえることすらないかもしれません。

コネが有れば編集者に紹介してもらえます

企画書を見てもらうためにも必要なのが、編集者に近しい人から紹介して貰う方法です。誰だって見ず知らずのひとから面白いものがありますよと言われても胡散臭くて近づこうとはしないでしょう。しかし、友人などの紹介で面白いものがあると聞かされていれば見てみたくなります。具体的なところとしては、自分の書きたいジャンルの著者と知り合いになっておくのが一番の近道です。そうすれば著者の側からこういうのを書きたいという人がいると情報を送ったり、編集者の側から筆者にこういうジャンルを書きたいのだけど誰か良い人はいないかと相談を受けて紹介されたりします。

都合の良い人脈がいない場合でもチャンスはあります

しかし実際には知り合いが周りにいないという方が大多数ですので、別な方向からアプローチしていきます。まず出版セミナーに参加してみると良いでしょう。ビジネス書がメインですが、本を出版した際に読者や一般向けに出版セミナーを行うことがあります。このようなセミナーには筆者を始めとして編集者など出版関係の方が来ますので貴重な人脈を作るきっかけとなります。
また、出版コンサルタントなどが開催している著者スクールや出版社が運営している出版スクールに通うことも、企画出版への道となります。スクールは人脈を作るというメリット以外にも企画書に対する意見が聞けて次の企画書を作る際の改善点になったり、出版脂肪の仲間を見つけられるというメリットがあります。一人であれこれ悩んでも全身はしませんのでこういうアドバイスが与えられる機会や磨き合う仲間といった存在は大きな力になります。

自費出版と企画出版の違い

自費出版と企画出版の大きな違いとして、出版費用をどこが出しているかという点があります。自費出版においては、出版費用を筆者個人が調達します。といっても筆者自身が全額払うというわけではないのです。現在では、クラウドファンディングによって資金を集めることもできますので、有志を募ってお金を集めるケースもあります。それに対して企画出版では出版社が費用を払います。出版社が費用を出しているわけですから、売れる本を作成しようという考えが根底にありますので、書く内容や誰に書いてもらうかは出版社が決めます。
ですので自然と実績のある作者が起用され、一般人のデビューする方法としては難しいこともあります。はじめから企画出版でデビューしようと思うのでしたら出版社が主催する賞に入賞したり、出版社の方向性にマッチした企画を持ち込んでみるなど段階を踏んで出版社に名前を覚えて貰う必要があります。

自費出版ならやれることが多い

その点、自費出版でしたら本のテーマや装丁に至るまで自由に決められます。本を作成するために出版社に持ち込みますが、出版社を雇う形になりますので出版社側も筆者の意向を最大限に生かした作品を作るべく企画を練り、アドバイスしてくれます。そしてどんなにキャリアのない筆者の作品でも、費用さえ払えば本にしてくれます。書店に流通しないプライベート本を作成するのでしたら、自費出版がちょうどよい手法です。
講演会など自分のイベントの際に販売するという方法も取れます。ただし、出版社からの宣伝というバックアップがありませんので、書店で販売されるためには自分で各店舗を回って自分の手でプロデュースを行う必要があります。

共同出版という折衷案も

自費出版と企画出版、双方のデメリットを解消する出版形式として近年では出版費用を筆者と出版社が折半する共同出版という方法も広がっています。この方法でしたら筆者側はある程度出版費用を抑えることができますし、微力ながら出版社からの宣伝も期待できます。ですが気をつけていきたいのが、共同出版の場合はまだ正式なルールというものが決まっていなく、在庫の処分方法や版権の扱いについては出版社によってまちまちです。
在庫に関しては筆者に無料で返しているところから筆者が買取を行うところまで様々なパターンがあります。版権に関しても、出版社の独占状態になっていて他の出版社で発表できないところから筆者が管理していて他の場所で発表できる場合もあります。